確率変数の変換 Y=aX+b |期待値・分散が分からなくなるポイントは「何をX と置くか」

箱の中に赤玉と白玉が入っていて、
いくつか取り出した結果によって「賞金」が決まる。

共通テストや定期テストでは、このように
設定が少し複雑な期待値・分散の問題がよく出てきます。

このような複雑な設定の問題に取り組む際に、
賞金を直接、確率変数X でとっていませんか?

実はこのタイプの問題ではその取り方をすると、
期待値や分散の計算が一気に面倒になります。

この問題は「賞金以外のあるもの」を確率変数X と取ることで、
計算の手間を格段に減らすことができます。

その考え方が「確率変数の変換 Y = aX + b」です!

  • 「なんでY = aX + b に変換するの?」
  • 「確率変数X で取るべきものは?」
  • 「変換後の期待値・分散はどう求めるの?」

という疑問を持つ高校生・受験生の方は、ぜひここで基礎を固めて、
共通テスト数学の得点アップにつなげましょう!

確率変数X に対する期待値・分散・標準偏差の公式(復習)

今回のメインテーマに入る前に、
確率変数X に対する期待値・分散・標準偏差の公式を確認しておきましょう。

期待値の公式

分散の公式

確率変数X の期待値・分散・標準偏差の公式の使い方が心配な方向けに、
「第2章|期待値と分散・標準偏差」で詳しく解説をしています。

確率変数X に対する基本的な公式が大丈夫な方は、
今回のメインである「確率変数の変換」へ進みましょう!

確率変数の変換とは? (Y = aX + b)

確率変数の変換とは、
元の確率変数 X の値を、別の形に置き換えて新しい確率変数 Y を作ることをいいます。

その中でも、最もよく使われるのが
線形変換(Y = aX + b) と呼ばれる変換です。

なぜ変換を行うの?

「確率変数ってわざわざ変換しないといけないの?」

新しい手順や公式を覚えることを面倒に感じるかもしれませんが、
確率変数を変換するのにはきちんとした理由があります。

  • 計算を楽にするため
  • 設定の変更に対応するため

これら2つが特に大きな理由です!

確率変数の変換をする・しないでは、
計算の複雑さと設定変更への柔軟さに大きな差があります。

「確率変数の変換をする・しない」の2パターンのアプローチの比較検証記事で、
確率変数の変換のメリットを体感してください!

この章では、
確率変数の変換方法とその数値の算出法にフォーカスします。

次は変換の公式を解説します。

確率変数の変換|期待値・分散を求める公式

確率変数Xに対して、Y = aX + b と変換したとき、Y の期待値と分散は以下のように求められます。

このように、
X の期待値や分散がわかっていれば、Y の期待値・分散もすぐに計算できます。

この変換公式がどのように導かれるのか気になる方は、
以下の記事で詳しく解説していますのでぜひご覧ください。

確率変数の変換のメリットと公式まではわかったけど、
実際の問題演習で何を確率変数でとればよいか分からない…

このような悩みを持つ方は、
次の「確率変数X ・Y の置き方」で解決しましょう!

確率変数の変換|確率変数X・Y の置き方

確率変数の変換が便利なのはわかったけど、
実際、確率変数X・Y はどのように置けばいいのだろう…

その悩みもここで解決しましょう!

求めたいものが何によって決まっているか考える

箱の中に赤玉が7個、白玉が3個入っている。
この箱の中から球を2個、同時に取り出す。
取り出した球について、赤玉1つにつき100円もらい、白玉1つにつき120円支払うとき、賞金の期待値と分散を求めよ。

冒頭の例題です。

確率変数X がとる値と、
確率変数Y の表し方について考えましょう。

ここで問われているのは「賞金について」ですね。
なので確率変数Y は賞金です。

次に考えるのは、その賞金は何によって決まっているのか…

「赤玉1つにつき100円もらい、白玉1つにつき120円支払う」

そうです、賞金は引いた球の色によって決まっています
これを確率変数X で置きましょう。

この場合は例えば、
「引いた赤玉の個数」を確率変数X と置くのが一つの正解です。

最後に Y = aX + b の係数を決定します。

引いた赤玉の個数がX ならば、引いた白玉の個数は2 – X

赤玉1つにつき100円もらい、白玉1つにつき120円支払うので

Y=100×X120(2X)Y=100 \times X -120(2-X)
=220X240=220X -240

これでクリアです!


コインを3枚同時に投げる。
表の枚数1枚につき10分、裏の枚数1枚につき5分走ることとする。
この時の走る時間の期待値・分散を求めよ。

もう1題、練習をしてみましょう。

こちらも、確率変数X がとる値と、
確率変数Y の表し方について考えましょう。

問われているのは走る時間です。

確率変数Y 「走る時間」

走る時間が決まる要素は「コインの表裏」ですね。

この場合は「表のコインの枚数をX 」とおくと良いです。

表のコインの枚数がX なら、裏のコインは 3 – X 枚。

表の枚数1枚につき10分、裏の枚数1枚につき5分走るから

Y=10X+5(3X)Y=10X +5(3-X)
=5X+15=5X+15

何を確率変数X で置けばよいか迷ったときは
求めたいものが何によって決まっているか考えましょう。

次は例題で、実際に期待値・分散まで求めます!

例題|確率変数の変換を使ってみよう

Y = aX + b の変換と期待値・分散について実際に具体例で求めてみましょう!

ここから先は、確率変数X について期待値・分散を求めるスキルが必須です。

確率変数X についての期待値・分散の計算方法が不安な方は、
第2章「期待値と分散・標準偏差」で復習をしましょう。

例題:賞金の問題

箱の中に赤玉が7個、白玉が3個入っている。
この箱の中から球を2個、同時に取り出す。
取り出した球について、赤玉1つにつき100円もらい、白玉1つにつき120円支払うとき、賞金の期待値と分散を求めよ。

この記事で繰り返し触れているこの問題について、
期待値・分散まで求めましょう。

確率変数X・Y を決める

問われているのは賞金ですが、
それを決めているのは「引いた球の色」です

確率変数X … 取り出した2個のうち赤玉の数
確率変数Y … 賞金

このように置きます。

賞金(確率変数Y)ついてY = aX + b に変換する

賞金を aX + b の形 に変換します。

赤玉が X 個 出たとすると、残りの 白玉は(2 − X)個

赤玉 1 個につき +100円、白玉 1 個につき −120円

よって、

Y=100X120(2X)Y=100X -120(2-X)

Y=220X240Y=220X -240

このように変換されます。

確率変数X(赤玉の個数) の期待値・分散を求める

ここはスムーズに突破しましょう!

確率分布を表にまとめます。

X001122
P(X)115\dfrac{1}{15}715\dfrac{7}{15}715\dfrac{7}{15}11

この表をもとに計算を進めるのですが…

今回のようにE[X], E[X²] まで求めるような場面では、Xを縦にとった表でまとめてもOKです。

X(赤玉の数)確率P(X)X × P(X)X² × P(X)
00115\dfrac{1}{15}0000
11715\dfrac{7}{15}715\dfrac{7}{15}715\dfrac{7}{15}
22715\dfrac{7}{15}1415\dfrac{14}{15}2815\dfrac{28}{15}
1175\dfrac{7}{5}73\dfrac{7}{3}

E[X], E[X²] について計算

E[X]=115×(7+14)E[X]=\frac{1}{15}\times(7+14)
=75=\frac{7}{5}

E[X2]=115×(7+28)E[X^2]=\frac{1}{15}\times(7+28)
=73=\frac{7}{3}

これらをもとに、期待値・分散を求めましょう。

期待値:

E[X]=75E[X]=\frac{7}{5}

V[X]=E[X2](E[X])2V[X]=E[X^2] – (E[X])^2

=73(75)2=\frac{7}{3}-(\frac{7}{5})^2

=2875=\frac{28}{75}

これで「確率変数X 」についての計算はクリア。

これをもとに「確率変数Y 」について考えます。

賞金(確率変数Y)について期待値・分散を求める

Y=220X240Y = 220X – 240 の期待値・分散を公式で求めます。

期待値:

E[Y]=220×E[X]240E[Y]=220\times E[X]-240
=220×75240=220\times \frac{7}{5}-240
=68=68

分散:

V[Y]=2202×V[X]V[Y]=220^2\times V[X]
=48400×2875=48400\times \frac{28}{75}
45173.33≒45173.33

これでクリア!

例題:時間の問題

コインを3枚同時に投げる。
表の枚数1枚につき10分、裏の枚数1枚につき5分走ることとする。
この時の走る時間の期待値・分散を求めよ。

こちらも確率変数の置き方を練習した問題です。

走る時間の期待値・分散まで算出してみましょう。

確率変数X・Y を決める

問われているのは走る時間ですが、
それを決めている要素は「表のコインの枚数」です。

確率変数X … 表のコインの枚数
確率変数Y … 走る時間

このように設定しましょう。

賞金(確率変数Y)ついてY = aX + b に変換する

走る時間を aX + b の形 に変換します。

Y=10X+5(3X)Y=10X +5(3-X)
Y=5X+15Y=5X +15

このように変換されます。

確率変数X(表のコインの枚数) の期待値・分散を求める

ここはスムーズに突破しましょう!

確率分布を表にまとめます。

Xを縦にとった表でまとめます。

X(表のコインの枚数)確率P(X)X × P(X)X² × P(X)
0018\dfrac{1}{8}0000
1138\dfrac{3}{8}38\dfrac{3}{8}38\dfrac{3}{8}
2238\dfrac{3}{8}68\dfrac{6}{8}128\dfrac{12}{8}
318\dfrac{1}{8}38\dfrac{3}{8}98\dfrac{9}{8}
1132\dfrac{3}{2}3

E[X], E[X²] について計算

E[X]=18×(3+6+3)E[X]=\frac{1}{8}\times(3+6+3)
=32=\frac{3}{2}

E[X2]=18×(3+12+9)E[X^2]=\frac{1}{8}\times(3+12+9)
=3=3

これらをもとに、期待値・分散を求めましょう。

期待値:

E[X]=32E[X]=\frac{3}{2}

V[X]=E[X2](E[X])2V[X]=E[X^2] – (E[X])^2

=3(32)2=3-(\frac{3}{2})^2

=34=\frac{3}{4}

これで「確率変数X 」についての計算はクリア。

これをもとに「確率変数Y 」について考えます。

賞金(確率変数Y)について期待値・分散を求める

Y=5X+15Y=5X +15 の期待値・分散を公式で求めます。

期待値:

E[Y]=5×E[X]+15E[Y]=5\times E[X]+15

=5×32+15=5\times \frac{3}{2}+15

=452=\frac{45}{2}

分散:

V[Y]=52×V[X]V[Y]=5^2\times V[X]

=25×34=25\times \frac{3}{4}

=18.75=18.75

これでクリア!

解き方の確認

  1. 確率変数X・Y を宣言する
  2. Y = aX + b を立式する
  3. 確率変数Xについて期待値・分散を求める
  4. 確率変数Yについて期待値・分散を求める

どちらの例題もこの手順で解きました。

確率変数X の計算に入る前にX・Y で表すものを決めておくと、
思わぬミスを防ぐことができます。

演習

箱の中に赤玉が7個、白玉が3個入っている。
この箱の中から球を2個、同時に取り出す。
取り出した球について、赤玉1つにつき100円もらい、白玉1つにつきいくらか支払う
賞金の期待値を0より大きくしたいとき、白玉の支払額として設定できるの最大値を整数で答えよ。

今回は白玉の支払額の取りうる最大値。

例題とは問われていることが違いますが、それでも解法の手順はほぼ同じです。

確率変数の宣言(例題1より)

確率変数X … 取り出した2個のうち赤玉の数
確率変数Y … 賞金

賞金Y を aX + b に変換する

Y=100Xa(2X)Y=100X -a(2-X)

よって

Y=(100+a)X2aY=(100+a)X -2a

確率変数X の期待値・分散(例題1より)

E[X]=75E[X]=\frac{7}{5}

V[X]=2875V[X]=\frac{28}{75}

確率変数Yについて期待値を求める

Y=(100+a)X2aY=(100+a)X -2a より

E[Y]=(100+a)×E[X]2aE[Y]=(100+a) \times E[X] -2a

E[Y]=(100+a)×752aE[Y]=(100+a) \times \frac{7}{5} -2a

E[Y]=15(7003a)E[Y]=\frac{1}{5} (700-3a)

公式を用いてYの期待値を算出。

期待値が正になる条件を考える

賞金の期待値がプラスになるには
E[Y]>0E[Y]>0 となればよいので

15(7003a)>0\frac{1}{5} (700-3a)>0

3a<7003a<700

a<233.33a<233.33…

つまり白玉の支払額として設定できるの最大値は233円
ということになります!

賞金を最初から Y として直接処理しようとすると、
Y の取りうる値が文字式だらけになり、先に進むことがかなり厳しくなります。

しかし、このように赤玉の数を X として処理 → 確率変数の変換 → 賞金の処理の順でこなすことで
とてもスマートに解くことができます。

この問題も線形変換の便利さがよくわかる一例ですね。

まとめ

Y = aX + b の形で確率変数を変換すると、
期待値・分散をスマートに求めることができます。

これは変換法を新たに覚えるに値する価値です。

問題演習を通して、
何を確率変数X として確率変数Y を表せばよいのかを学びましょう。

次に学ぶのは、
「確率分布をまとめる」を経由せずに期待値・分散を求める方法。

「第4章|二項分布・ベルヌーイ分布」でさらなる処理の短縮を身に付けましょう!

aX + b の変換と期待値・分散の変化の確認テスト|この章の理解はバッチリ?

以下のポイントが自力で説明・再現できれば、この章はほぼマスターです!

  • 確率変数X に対する期待値・分散の公式
  • なぜaX + b の形へ変換(線形変換)するのか
  • 確率変数Y( = aX + b)に対する期待値・分散の公式
  • 確率変数Y( = aX + b)に対する期待値・分散の公式の証明

「ちょっと怪しいかも…」と思った箇所があれば、上に戻って再チェックしてみましょう!


◀第2章|期待値と分散・標準偏差
▶第4章|二項分布・ベルヌーイ分布

▶︎高校数学B「統計的な推測」シリーズ目録・過去問解説のまとめはこちら!


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