【コラム】溶液を10倍に薄めるとpHはどう変わる?|文系のための高校化学基礎
pHの基本的な計算方法の次に学習するのが、
「溶液の濃度を変化させたときのpHの変化」です。
「溶液を10倍に薄めると、pHは7に1だけ近づく」
この基本的な解釈をもとに、酸・塩基・pH7付近のそれぞれについて、
どのような変化が起こるのか具体的に解説をします。
この記事を読んで「濃度の変化とpH」についてしっかりとおさえて、
共通テストや定期テストの準備をしましょう!
10倍に薄めるとpHはどう変わる?:暗記必須の重要項目
まずは結論から。
溶液を10倍に薄めると、pHは7に1だけ近づきます。
酸なら
pH2→3
pH3→4
塩基なら
pH12→11
pH10→9
となります。
最もよくある間違えは、
「溶液が10倍に薄まるとpHが1増える」です。
これは酸の場合であれば成り立ちますが、塩基の場合は×です。
さらにpH7付近でもこの考え方は×です。
溶液を10倍に薄めると、pHは7に1だけ近づく。
まずはこの規則を覚えましょう。
なぜ酸・塩基で10倍に薄めた結果が変わる?
酸の溶液の10倍希釈ではpHが1増える。
塩基の溶液の10倍希釈ではpHが1減る。
酸・塩基でなぜ10倍希釈の結果が変わるのでしょうか。
それぞれのパターンについて濃度をもとに具体的にチェックしましょう。
酸の場合
薄める前のもとの溶液のpHを2としましょう。
溶液の体積は1Lとします。
pHが2であるとは、
H⁺の濃度が1.0 × 10⁻² mol/L ということです。
溶液の体積が1Lなので、
H⁺の物質量は1.0 × 10⁻² mol ですね。
元の溶液
pHは2
溶液の体積は1L
H⁺の濃度は1.0 × 10⁻² mol/L
H⁺の物質量は1.0 × 10⁻² mol
この溶液を10倍に薄めるとどうなるでしょうか。
まず溶液の体積が1Lから10Lに変化します。
一方で、H⁺そのものを取り除いたり加えたりしているわけではありません。
そのためH⁺の物質量は1.0 × 10⁻² mol からほとんど変化しません。
(厳密には水の自己電離によってわずかに増えますが、十分に無視できる量です。)
よって薄めた後の溶液は
体積が10Lに対してH⁺の物質量は1.0 × 10⁻² mol
H⁺濃度=H⁺の物質量÷体積 なので
つまりH⁺の濃度は1.0 × 10⁻³ mol となり、
pHは3と分かります。
希釈後の溶液
pHは3
溶液の体積は10L
H⁺の濃度は1.0 × 10⁻³ mol/L
H⁺の物質量は1.0 × 10⁻² mol
結論:酸の溶液の希釈ではH⁺の濃度が小さくなるためpHが大きくなる。
塩基の溶液を10倍に薄めるとpHが1下がる理由
薄める前のもとの溶液のpHを12としましょう。
溶液の体積は1Lとします。
塩基の場合はH⁺ではなくOH⁻を主役にして考えるとわかりやすいです。
pHが12であるとは、
OH⁻の濃度が 1.0 × 10⁻² mol/L ということです。
溶液の体積が1Lなので、
OH⁻の物質量は 1.0 × 10⁻² mol ですね。
元の溶液
pHは12
溶液の体積は1L
OH⁻の濃度は1.0 × 10⁻² mol/L
OH⁻の物質量は1.0 × 10⁻² mol
ここまで整理すると、先ほどの酸とほとんど同じ考えが通用することが分かりますね。
溶液を10倍に薄めると、
体積は10倍になるがOH⁻の物質量はほとんど変化しません。
そのためOH⁻濃度が1.0 × 10⁻³ mol/L となり、
pHは11に変化します。
結論:塩基の溶液の希釈ではOH⁻の濃度が小さくなるためpHが小さくなる。
酸を薄めると塩基になる?
酸の溶液の希釈では
H⁺の濃度が小さくなるためpHが大きくなることを確認しました。
では溶液を10⁷倍に薄めたら、pHは2→9へ、
つまり酸から塩基へ変化するのでしょうか?
結論を先に言うと、
酸を薄めても塩基にはなりません。
pHが7に近づくにつれてある反応の影響が大きくなるからです。
それは水の自己電離(水のイオン積)という反応です。
純粋な水でも、ごくわずかですが
H₂O ⇄ H⁺ + OH⁻
という反応が起こっています。
そのため、純水中にもH⁺とOH⁻がそれぞれ1.0 × 10⁻⁷ mol/Lずつ存在しています。
つまり、水そのものがpH7の性質を持っているということです。
酸を十分に薄めていくと、もともと酸が放出していたH⁺よりも、
水の自己電離によって生じるH⁺の影響が無視できなくなります。
その結果、pHは
2 → 3 → 4 → 5 → 6 …
のように7へ近づいていきますが、
7を超えて塩基性になることはありません。
同様に、塩基を十分に薄めても
12 → 11 → 10 → 9 → 8 …
のように7へ近づくだけで、酸性になることはありません。
高校化学基礎では、pH5程度までは水の自己電離を無視して計算をします。
一方で、pHが6~8付近になると、水の自己電離の影響を無視できなくなり、
単純に「10倍薄めるとpHが1変化する」という考え方は成り立たなくなります。
水の自己電離は高校化学でもう少し詳しく扱います。
共通テストで化学基礎のみを受験するのであれば、知識として覚えておけば十分です。
このあたりのイレギュラーにもうまく対応できるように、
「溶液を10倍に薄めると、pHは7に1だけ近づく」と覚えておくことをおすすめします。
まとめ
溶液を10倍に薄めると、pHは7に1だけ近づく。
結論としてはこれを覚えておけば十分です。
酸・塩基のpHが変化する理由をH⁺・OH⁻の濃度とつなげて説明できると◎。
水の自己電離は話だけ覚えておくと、考え方の補強になります。
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