高校数学B「統計的な推測」 第6章:正規分布と標準化 についてやさしく解説

正規分布の式は見た目が難しそうですが、使い方を覚えれば定期テストや共通テストでも得点源になります。
この記事では、正規分布と標準化について、具体例を用いてわかりやすく解説します。
- 「正規分布って何?」
- 「標準化って何?」
- 「実際にどうやって問題を解くの?」
という疑問を持つ高校生・受験生の方は、ぜひここで基礎を固めて、共通テスト数学のスコアアップにつなげましょう!
※この記事は、林個別指導塾が運営する学習ブログです。
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平均0・標準偏差1でない正規分布
第5章では、正規分布と標準正規分布表の使い方について学びました。
ここからは、実際のデータに即した「平均0・標準偏差1ではない正規分布」を扱います。
私たちの身の回りで見られる分布──全国模試の点数、身長、体重、テスト結果など──は、ほとんどがこのタイプです。
今回は、全国模試の点数を具体例としてみることで、「平均0・標準偏差1ではない正規分布」の扱い方をマスターしましょう。
正規分布の具体例(全国模試の点数)
全国模試の得点分布は、多くの受験者の学力が反映された「正規分布」に近い形をしています。具体的な例を見てみましょう。
| 模試科目 | 平均点 (μ) | 標準偏差 (σ) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 数学 | 58点 | 12点 | 難易度がやや高く、高得点が少ない。 |
| 英語 | 62点 | 10点 | 標準的な分布。偏差値算出によく使われる。 |
| 国語 | 55点 | 14点 | 得意・不得意の差が大きく、ばらつきが大きい。 |
これらの分布はいずれも、平均点の付近に最も多くの受験者が集中し、点数が離れるほど人数が減っていくという特徴を持っています。つまり、どの科目も「正規分布」に近い形になっているのです。
全国模試の点数は本当に正規分布?
全国模試の点数は、理論上の「完全な正規分布」ではありません。
例えば、満点の上限や0点の下限があるため、左右が無限に広がる理想的な正規分布とは異なります。
また、問題の難易度や受験者層によって、分布の形が少し歪んだり、山が2つに分かれたりすることもあります。
それでも、受験者数が十分に多い場合、個々の得点の分布は正規分布に非常に近づくことが知られています。
これは「中心極限定理」と呼ばれる統計の基本原理に基づいており、複数の小さな要因(問題の難易度、学習量、体調など)が合わさると、全体の結果は自然に正規分布に近くなるのです。
したがって、全国模試のように大人数のデータを扱う場合、正規分布として近似しても十分に正確な分析ができるのです。
それぞれの正規分布に従う事象は比較できる?
同じ「正規分布」に近いデータであっても、平均点や標準偏差が異なれば、単純に数値だけで比較することはできません。
例えば、数学と英語どちらも70点だった場合。
これらはどちらも同じくらい良い成績といえるでしょうか?
- 数学:平均58点、標準偏差12点 → 70点はかなり上位
- 英語:平均62点、標準偏差10点 → 70点は平均より少し上
このように、分布の形(平均とばらつき)が違えば、同じ70点でも意味が変わります。
この場合は数学の方が英語よりも良い成績、と言えますね。
では、異なる分布間で「どちらがより良い成績なのか」をどうやって比べればよいのでしょうか?
ここで登場するのが、標準化(standardization)という考え方です!
標準化を使うことで、異なる分布を共通の尺度にそろえ、公平に比較できるようになります。
標準化とは?

たとえば、ある受験生が数学で60点、英語で60点を取ったとしましょう。見た目の点数は同じでも、平均点が異なればその評価は変わります。
- 数学:平均58点、標準偏差12点 → 平均よりやや上
- 英語:平均62点、標準偏差10点 → 平均より少し下
このように、平均点やばらつきが異なる科目を点数だけで比べるのは不公平です。そこで登場するのが「標準化(standardization)」。
標準化とは、異なる平均や標準偏差をもつ分布を、共通の基準(平均0・標準偏差1)に変換する操作です。
数式で表すと:

- x:観測値(点数)
- μ:平均値
- σ:標準偏差
この式で求めた を z値(zスコア) と呼びます。
z値は、「平均からどれだけ離れているか」を標準偏差の単位で表した値です。
ちなみに、学力を示す指標の一つである偏差値。これも標準化を利用したものです。
なぜ標準化をするのか?
標準化には、次の2つの大きな目的があります。
- 異なるテストや集団の結果を公平に比較できるようにする
例:数学60点と英語60点、どちらが優れているか? → 標準化すれば比較できる。 - 確率を求めやすくする
標準化すれば、標準正規分布表を使って確率を求められる(第5章で学んだ手法が使える)。
ここからは全国模試の成績について、標準化と標準正規分布表を用いて例題・演習題を解いてみましょう。
例題

実際に標準化を用いて正規分布の問題を解いてみましょう。
- 数学の模試(平均58点、標準偏差12点)
- 英語の模試(平均62点、標準偏差10点)
- 国語の模試(平均55点、標準偏差14点)
※各科目の点数は正規分布に従うものとする。
z値 → 確率の場合
Aさんは英語で74点を取りました。これは上位何%?
まずは標準化を行って、点数からz値へ変換をします。

英語の模試(平均62点、標準偏差10点)においてA さんは74 点を取ったので
- x:観測値(点数)は74
- μ:平均値 は62
- σ:標準偏差 は10
数値を代入すると、z = 1.2 となります。
次に標準正規分布表の活用。

f(1.2) = 0.3849
f(1.2) = P(0 ≦ X ≦ 1.2)
つまり0 以上1.2以下を取る確率は約38.5%
今回は上位何%か答える必要があるので
0.5 – 0.3849 = 0.1151
z = 1.2 に対応する上位割合は約 11.5%。
Aさんは上位約11.5%に位置しています。
確率 → z値 の場合
数学の試験で上位何30% に入るには何点必要?
この問題は、先ほどの例題とは逆の手順で解いていきます。
まずは標準正規分布表の活用。

上位30%に対応するz値を求めます。
上位30% ということはこの表でいうと、f(z) = 0.20 に最も近いz を探すことになります。
f(0.52) = 0.1985 が最も近い数値。
よって上位30%に対応するz値は、z = 0.52 です。
つぎはz = 0.52 に相当する試験の点数を、標準化の式を用いて求めます。

数学の模試(平均58点、標準偏差12点)におけるz = 0.52
- x:観測値(点数)は未知
- μ:平均値 は58
- σ:標準偏差 は12
式に代入すると、x = 0.52 × 12 + 58 = 64.24
したがって、上位30%に入るにはおよそ64.2点以上が必要です。
比較をする場合
2人のうちどちらがより上位の成績か答えなさい。
Bさん:英語 74点(平均62, 標準偏差10)
Cさん:数学 70点(平均58, 標準偏差12)
異なる科目の得点を比較するにはどうすればよいでしょうか。
それぞれの成績を標準化してz値を求めましょう。
その値の大小で成績を比較することができます。

まずはBさんから。
英語の模試は平均62点、標準偏差10点なので
z = 1.2
次はCさん。
数学の模試は、平均58点、標準偏差12点なので
z = 1.0
Bさんのz値は1.2でCさんのz値は1.0
よってBさんのほうが平均からの距離が大きく、より優れた結果といえます。
- 標準化を行って標準正規分布表を活用する
- 標準正規分布表から読み取った数値を標準化で変換をする
- 標準化した値同士を比較する
必要に応じた手順を守れるように、例題を繰り返し確認しましょう!
演習

- 数学の模試(平均58点、標準偏差12点)
- 英語の模試(平均62点、標準偏差10点)
- 国語の模試(平均55点、標準偏差14点)
※各科目の点数は正規分布に従うものとする。
- 数学の模試で、Dさんは70点を取りました。成績は上位何%ですか?
- 英語の模試で、z値が−0.8の受験者の点数を求めましょう。
- 英語70点と国語68点の成績を比較し、どちらがより優れているか考えましょう。
問1 解説
点数を標準化してz値を求める。
そして標準正規分布表からf(z)を求めて計算。
の手順ですね。

数学の模試は平均58点、標準偏差12点なので
z = 1.0

標準正規分布表より
f(1.0) = 0.3413
0.5 – 0.3413 = 0.1587
よって問1の答えは 約15.9%
問2 解説
標準化の処理で点数を求めましょう。

英語の模試は、平均62点、標準偏差10点なので
x = -0.8 × 10 + 62 = 54
よって54点
よって問1の答えは 約15.9%
問3 解説
標準化の処理でそれぞれのz値を求めます。
- 英語の模試(平均62点、標準偏差10点)
- 国語の模試(平均55点、標準偏差14点)
英語70点

英語70点のz値は
z = 0.8
国語68点のz値は
z = 13 / 14
0.8 – 13/14 = 1/70(56 – 65) < 0 より
0.8 < 13/14
よってよりz値の高い国語の方がよい成績です。
全問正解できましたか?
どの問題も慣れてしまえば簡単に解くことができます。
このページの演習や、自分の持っている問題集の問題を、スムーズに解けるようになるまで繰り返しましょう。
まとめ
正規分布と標準化について、よく理解できましたか?
点数とz値を変換するために標準化を行って。
z値とf(z) を変換するために標準正規分布表を活用しました。
今回具体例として扱った全国模試以外のテーマでも問題なく解けるように、様々な種類の問題を繰り返し解いて練習しましょう!
正規分布と標準化の確認テスト|この章の理解はバッチリ?
以下のポイントが自力で説明・再現できれば、この章はほぼマスターです!
- 正規分布と標準正規分布の違いは?
- 標準化とは何か
- 標準化の活用法
「ちょっと怪しいかも…」と思った箇所があれば、上に戻って再チェックしてみましょう!
▶︎ 高校数学B「統計的な推測」シリーズ全体の目録はこちら!
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