高校数学B「統計的な推測」第3章:aX + b の変換と期待値・分散の変化

統計的な推測の中でも、期待値と分散・標準偏差共通テストで高得点を狙うために欠かせない単元です。

このページでは、「aX + b の変換と期待値・分散の変化」の基本を、例題を通してわかりやすく解説します。

  • 「なんでaX + b に変換するの?」
  • 「変換後の期待値・分散はどう求めるの?」

という疑問を持つ高校生・受験生の方は、ぜひここで基礎を固めて、共通テスト数学のスコアアップにつなげましょう!

※この記事は、林個別指導塾が運営する学習ブログです。

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確率変数X に対する期待値、分散・標準偏差の公式(復習)

今回のメインテーマに入る前に、確率変数X に対する期待値、分散・標準偏差の公式を確認しておきましょう。

期待値の公式

分散の公式

実際に計算をする際には下の式を活用することが多いですね。

これらの公式については「第2章:期待値と分散・標準偏差をやさしく解説」で扱っているので、不安がある方はチェックしてください!


基本的な公式が大丈夫な方は、今回のメインへ進みましょう!

aX + b に変換とは?

「aX + b に変換する」とは、元の確率変数Xに定数aをかけて、さらに定数bを足した新しい確率変数Y = aX + bを作ることを意味します。(ちなみに、このような変換を線形変換と呼びます。)

これは、元の出来事(たとえば「赤玉の数」や「表の枚数」など)に対して、賞金や得点といった「現実の数量」を割り当てるときによく使われます。たとえば「赤玉1個につき100円もらえる」なら、Y = 100X という式で金額を表せます。

このような変換によって、期待値や分散が簡単に計算できる公式が成り立つため、統計的な処理が非常に便利になります。

なぜ変換を行うの?

そそもそも、なぜ変換をする必要があるのか気になりますよね。

その理由はいくつかあります:

  • 元の確率変数Xを、金額や点数など現実の値に変換したいから
  • 変換後の期待値や分散を、簡単な計算で求めたいから
  • 問題文に複雑な設定があるとき、変換によって整理しやすくなるから

このように、元の変数Xを変換して新しい変数Y = aX + bを定義するのは、数学や統計で非常に基本的かつ重要な考え方です。

期待値・分散を求める公式

確率変数Xに対して、Y = aX + b と変換したとき、Y の期待値と分散は以下のように求められます。

  • 期待値: E(Y) = aE(X) + b
  • 分散: V(Y) = a²V(X)

これでYに対する期待値・分散を求めることができます。

確率変数Xに対する期待値や分散があらかじめわかっていればYについても簡単に算出できることはかなりのメリットですね。

この変換の公式の導出方法が気になる方は以下の記事をチェックしてください。

例題:aX + b の変換と期待値・分散の変化について理解を深めよう

X + b の変換と期待値・分散について実際に具体例で求めてみましょう!

以下の手順で進めます:

  1. 確率変数Xについて期待値、分散を求める
  2. 確率変数YについてY = aX + b のかたちをつくる
  3. 確率変数Yについて期待値、分散を求める

確率変数Xについての期待値、分散の計算方法が不安な方は、第2章を先に見直しましょう。

賞金を考える場合

箱の中に赤玉が7個、白玉が3個入っている。この箱の中から球を2個、同時に取り出す。 取り出した球について、赤玉1つにつき100円がもらえるとき、賞金の期待値と分散を求めよ。

赤玉の数について考える

まず、赤い球の個数について考えます。 確率変数Xを「取り出した2個のうち赤玉の数」としましょう。

ここで賞金ではなく、赤い球の個数について考えることが重要です。

Xの期待値・分散を求めるためには何をすればよいか。
確率分布を表ににまとめて、それをもとに計算。ですよね。

それでは表にまとめましょう。

X012
P(X)1/157/157/151

ちなみに、E[X], E[X²] まで求めるような場面では、次のようにXを縦に置いた表でまとめるのもありです。

X(赤玉の数)確率P(X)X × P(X)X² × P(X)
01/1500
17/157/157/15
27/1514/1528/15
1
  • E(X) = 0 + 7/15 + 14/15 = 21/15 = 7/5
  • E(X²) = 0 + 7/15 + 28/15 = 35/15 = 7/3
  • V(X) = E(X²) – (E(X))² = 7/3 – (7/5)² = 7/3 – 49/25 = (175 – 147)/75 = 28/75(≒ 0.373)

ここまでの手順は前回の章で学びましたね。

ここからが今回のメイン。

賞金について考える

引き当てる赤玉の個数についての期待値・分散が分かったら、今度は賞金について考えます。

賞金を aX + b の形で表しましょう。

赤玉ひとつにつき100円なので
Y = 100X が今回の表し方。

そうしたら、公式を用いてYについて算出しましょう。

  • E(Y) = 100 × 7/5 = 140
  • V(Y) = 100² × 28/75 = 280000/75 = 11200/3 (≒ 3733.33)

これでクリア。

この問題を見るだけでは、初めから賞金で確率分布を考えてもいいのでは… と思う方もいるかもしれませんね。

次に、線形変換の恩恵をより感じやすい例題を見ましょう。

賞金を考える場合(より複雑な設定)

箱の中に赤玉が7個、白玉が3個入っている。この箱の中から球を2個、同時に取り出す。 取り出した球について、赤玉1つにつき100円もらい、白玉1つにつき120円支払うとき、賞金の期待値と分散を求めよ。

ひとつ前の例題と同じシチュエーションです。

違うのは賞金の設定方法
例題2では、取り出した白玉1つにつき120円の支払いになっていますね。

例題1を解く際に賞金を確率変数X として解いてしまった人は、この例題を解くためにもまた同じような計算を繰り返さないといけない

さらに言うと今回の設定では、それぞれのケースの賞金がいくらか考えるのも大変ですよね。

こんな時に、今回の解法が光ります。

赤玉の数について考える

取り出した赤玉の数をXとして期待値と分散を求める

  • E(X) = 0 + 7/15 + 14/15 = 21/15 = 7/5
  • E(X²) = 0 + 7/15 + 28/15 = 35/15 = 7/3
  • V(X) = E(X²) – (E(X))² = 7/3 – (7/5)² = 7/3 – 49/25 = (175 – 147)/75 = 28/75(≒ 0.373)

ここまでは先ほど求めましたね。

賞金について考える

ここから賞金について考えます。
賞金を aX + b の形で表しましょう。

赤玉X個引いたら白玉は(2 – X)個引いたことになる。

赤玉1つにつき+100円、白玉1つにつき-120円。

つまり、Y = 100X – 120(2 – X)
Y = 220X – 240

そうしたら、公式を用いてYについて算出しましょう。

  • E(Y) = 220 × 7/5 – 240 = 308 – 240 = 68
  • V(Y) = 220² × 28/75 = 48400 × 28 / 75 = 135520/3 (≒ 45173.33)

このように、引いた球に対していろいろな賞金設定をするとき。
あらかじめ赤玉の個数について期待値と分散を求めておけば、あとは今回の公式でその設定ごとの期待値・分散が求められます

この例題の設定を引き継いだまま、演習ではもう少し違ったパターンの問題を解いてみましょう。

演習

箱の中に赤玉が7個、白玉が3個入っている。この箱の中から球を2個、同時に取り出す。 取り出した球について、赤玉1つにつき100円もらい、白玉1つにつきいくらか支払う。賞金の期待値を0より大きくしたいとき、白玉の支払額として設定できるの最大値を整数で答えよ。

今回は白玉の支払額の取りうる最大値。

例題2つとは問われていることが違いますが、それでも解法の手順はほぼ同じです。

赤玉の数について考える

取り出した赤玉の数をXとして期待値と分散を求める

  • E(X) = 0 + 7/15 + 14/15 = 21/15 = 7/5
  • E(X²) = 0 + 7/15 + 28/15 = 35/15 = 7/3
  • V(X) = E(X²) – (E(X))² = 7/3 – (7/5)² = 7/3 – 49/25 = (175 – 147)/75 = 28/75(≒ 0.373)

ここは先ほど求めたものをリユース。

賞金の設定について考える

次は賞金Yの設定。

赤玉1つにつき+100円、白玉1つにつき-a円としましょう。
このaの最大値が今回の焦点。

この設定で式を組むと、Y = 100X – a(2 – X)
Y = (100 + a)X – 2a

そうしたら、公式を用いてYについて期待値を算出。

  • E(Y) = (100 + a) × 7/5 – 2b = 1/5( 700 – 3a)

E(Y) が0より大きくなれば良い。
E(Y) > 0 で不等式を組むと

1/5( 700 – 3a) > 0
700 – 3a > 0
a < 700/3(≒233.3)

つまり、求めたい白玉の金額は233円。ということになります!

この問題を、賞金をX として一気に期待値を求めようとするとかなり複雑でわかりにくい。。
線形変換のありがたさがよくわかる問題ですね。

まとめ

Y = aX + b の形で確率変数を変換すると、期待値や分散もシンプルに変換できます。

この性質を使えば、現実の問題を数式で表したあと、素早く期待値や分散を計算することができます。数値のスケールが変わっても、元のXの性質がしっかり引き継がれるのがポイントです。

次回は第4章「ベルヌーイ分布・二項分布」について解説します。

aX + b の変換と期待値・分散の変化の確認テスト|この章の理解はバッチリ?

以下のポイントが自力で説明・再現できれば、この章はほぼマスターです!

  • 確率変数X に対する期待値・分散の公式
  • なぜaX + b の形へ変換(線形変換)するのか
  • 確率変数Y( = aX + b)に対する期待値・分散の公式
  • 確率変数Y( = aX + b)に対する期待値・分散の公式の証明

「ちょっと怪しいかも…」と思った箇所があれば、上に戻って再チェックしてみましょう!


▶︎ 高校数学B「統計的な推測」シリーズ全体の目録はこちら!

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